第一期 根岸塾開催のご報告
2010年8月27日、7人の修了生を送り出しました。皆様のご協力に感謝します。塾生が選択した復元研究のテーマは以下の通りです。
- 龍文環頭のろう型鋳造復元研究(慶北大学校大学院生)
- 垂飾付き耳飾りの接合技術の復元研究(慶北大学校大学院生)
- 金銅製飾履の復元研究(慶北大学校生)
- 垂飾付き耳飾りの主環の製作技術の復元研究(嶺南大学校博物館研究生)
- 七支刀象嵌技術の復元研究(嶺南大学校大学院生)
- 金銅製龍文透彫り帯金具の製作技術の復元研究(嶺南大学校大学院生)
- 金銅製龍文透彫り帯金具の製作技術の復元研究(京都大学大学院生)
2010年9月6日 工芸文化研究所
1.開塾の経緯と目的
工芸文化研究所が長年に亘って進めている様々な遺物の復元研究は、鈴木が1990年代から提唱している「古代史における技術移転論」と密接な関係にあります。技術移転論は、二つの地域の技術の違いから、その技術の移転に伴う変質を解析し、その変質を引き起こした要因を探り、そこから両地域の(技術)社会の姿を明らかにしようとする歴史学の一研究手法です。人の非言語的な営みである技術を歴史学で取り扱うためには、研究者自らが技術をしっかりとらえる必要があります。そのためには「作ってみる」「試してみる」という追体験が大変有効です。
これまで、工芸文化研究所は、日本、韓国、中国の若き研究者に対して、「誰でも出来る歴史学」と称した歴史学の一手法としての追体験(=復元研究)の機会を提供してきました。この度、工芸文化研究所は、根岸塾なる新しい学習の場を開設し、国内外の若き研究者に対して、技術移転論ならびに復元研究の手法の学習機会を提供することといたしました。
根岸塾は、考古学や美術史や技術史などの遺物に関わる歴史学を研究しようとする者に、出土遺物の観察・実測から、復元研究・製作、研究報告書執筆という、一連の復元研究の手法を自ら体験してもらい、それによって古代の技術への理解を深め、さらにそれを客観化する技術移転論の研究手法を獲得するきっかけを提供するものです。
2.2010年度根岸塾の期間
- 前期
- 2010年6月28日(月)~7月23日(金)
- 後期
- 2010年8月2日(月)~9月27日(金)
- 時間
- 午前9時~午後6時
- 場所
- 工芸文化研究所 根岸工房 ほか
3.予定される学習内容と指導体制(講義と実習の別・予定時限数・担当者)
<前期> テーマ「技術移転論と復元研究の基礎」
- ガイダンス(講義・ 1時限・鈴木勉)
- 古墳時代の金工(講義・14時限・鈴木勉)
- 考古学と復元(講義・ 6時限・千賀久、吉田秀享)
- 撮影と計測の実習(実技・ 7時限・鈴木勉)
- 作図実習(実技・ 8時限・鈴木勉)
- 記紀と技術移転(講義・ 4時限・福井卓造)
- 金工実習(実技・40時限・鈴木勉、松林正徳)
<後期> テーマ「透彫金銅製品の復元研究」
- 修復と復元(講義・ 4時限・古谷毅)
- 実測図作成(実技・12時限・杉山秀宏)
- 復元計画(実技・ 8時限・鈴木勉、松林正徳)
- 復元製作実習(実技・48時限・鈴木勉、松林正徳)
- 復元研究報告書作成(実技・12時限・鈴木勉、千賀久)
(注)1時限は90分、時限数と学習の内容は塾生の学習の進み具合によって変更します。
2010年4月16日
特定非営利活動法人 工芸文化研究所(根岸工房)
〒116-0014 東京都台東区根岸5丁目9番18号
電話:03-3871-4776(FAX共)